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1985年、茨城県茨城町生まれ。東北芸術工科大学で日本画コースを専攻し、芸術センスを磨いた。子供のころ、母親が通った池坊の生け花教室について行ったことで、自然と花が身近な存在になった。学業の傍ら、山形市内の花店でアルバイト。卒業後、そのまま定住し、2011年春、同市本町の旅館をリノベーションしたシェアハウスで無店舗花屋「アトリエモモ」を始めた。アトリエの近くで、映像制作会社を起業した川西町出身の夫と2人暮らし。茨城町の実家を継ぐ実弟は、陶芸家として活躍している。
■店名「アトリエモモ」に込めた思い
店名は、ドイツの童話「モモ」にちなんだもので、主人公のモモのところに来ると、誰にも素晴らしいアイデアが浮かんだり、けんかしていたのにすぐ仲直りしたり、不思議な力を持つ女の子の物語だ。小さいころ、母親が寝るときによく読んでくれて、大好きな童話になった。「周りの人を幸せにするモモのような花屋になりたい」という思いを店名に込めている。
知人の紹介で同市若葉町の現在地に移転。2階建ての家屋の内装は木組みのフォルムを生かしており、まさにアトリエそのもの。たくさんの種類の花々と見事なまでに調和している。
■山形を選んだ理由
芸術系の大学進学を考えていたため、特に山形を意識したわけではなかった。実際に住んでみると、まずは食べ物のおいしさにびっくり。「中でもお米は格別です。つや姫の大ファンです」。
食の豊富さのほか、伝統を感じさせる昔ながらの店と新しい店が、面白いように併存し調和しており、街なかを巡るだけでも楽しいという。「花屋さんも新旧のお店があって、知れば知るほどハマってしまった」と目を輝かせる。
■山形での暮らし
地域活動に積極的に関わっており、3月上旬には隣の上山市で、啓翁桜をメーンにしたイベントを繰り広げた。仲間とともに企画から携わり、花の販売のほかマルシェや様々な手作り品コーナーなどを武家屋敷通りに展開。数千人が訪れ、活況を呈した。「山形はお米やサクランボ農家が目立ちますが、花を栽培している農家も結構多く、県内外の人に広く知ってほしいです」と強調する。
アトリエでは子供向けに「花育」をやっている。4、5歳児から小学6年生までを対象にした花を楽しむ教室で、いわば情操教育だ。「誰にプレゼントしたら、どんな反応をしてくれるだろうか、というのを想像しながらフラワーアレンジメントしています」。南陽市からきている子もおり、ワクワクのひと時を過ごしているという。自分自身が池坊の教授でもあり、まさに「花育」そのものだ。
■移住を考えている人へのメッセージ
山形は四季の変化がはっきりしている。「夏は見事なほどに暑く、冬はしっかりと寒い。短い秋をどう楽しむか、物づくりの人にはうってつけかもしれません」。学生時代に県内の温泉巡りを楽しんだ。「全市町村に温泉があるなんてすごいと思います。ぜひお気に入りの温泉を見つけてほしい」とアピール。「三十三観音巡りをしながら御朱印集めも面白いですよ」とも。県外出身の自分を抵抗なく受け入れ、支援を惜しまない地域の人に感謝している。「県民性を実感できます」と目を細める。
(R5.6月)
アトリエモモ(山形市)