移住者体験談
齋宮 征博さん/神奈川から庄内へ移住
新設大学で自分の可能性を広げる
神奈川出身の齋宮(いつき)さんは、11年前、当時新設されたばかりの酒田市の東北公益文科大学に、第一期生として入学しました。新設大学ということで、先輩もいなければ前例もなく、自分たちでキャンパスライフのスタイルを切り開いていけるということが魅力的であり、進学の決め手になりました。山形にはもともと縁もゆかりもありませんでしたが、不安よりも新天地での生活への期待のほうが大きかったそうです。
ラジオのパーソナリティになるのが夢だった齋宮さんは、大学在学時にラジオサークルに所属。そのつながりを活かして、卒業後はコミュニティFM局でパーソナリティを勤めました。その後、視野を広げようと東京の企業に就職し、東京で働いていましたが、「自分には庄内が合っている、庄内が好きだ」と感じ、これまでに築いてきたつながりや可能性を信じて、平成23年に酒田に帰ってきました。
学生の立場からまちおこしを
齋宮さんは、在学時に多くのイベントの企画や地域での活動を意欲的に行ってきました。毎年10月、酒田の商店街を舞台にしたお祭りのときに同時開催される、公益大生主催の音楽イベント「SAKATA MUSIC FESTIVAL」は齋宮さんが仲間たちと立ち上げたイベントです。このイベントを立ち上げたきっかけは、仲間たち数人で観た仙台のジャズフェスティバルでした。そこで、自分の暮らすまちでも音楽祭をやりたいと思い立ち、「酒田を音楽の鳴り響くまちにしよう」と周囲に呼びかけました。子どもから年配者まで立ち寄る商店街で大音量の音楽を流すという企画ですので、課題や困難も多々ありましたが、熱意のこもった説得により、なんとか開催に至ることができました。「SAKATA MUSIC FESTIVAL」は2011年現在、7回にわたって開催され、齋宮さんたちの思いは現在もなお受け継がれています。
学生たちが地域活動に参加するメリットを、齋宮さんは「学生がまちに出るきっかけづくりになる」と語ります。内輪だけのつながりではなく、実際にまちに出てさまざまな人たちとのつながりの輪を広げることで、学生たちは、新たな知識や経験を得ることができます。そうしたつながりから新たなまちおこしの企画が生まれることもあり、自分たちが築いてきた礎が活かされていると感じることも多いそうです。
ラジオパーソナリティの経験も
庄内の魅力
齋宮さんはこれまで、地域のさまざまな人たちと関係を築いてきましたが、その潤滑油となったのはお酒だったそうです。居酒屋で一人お酒を飲んでいたとき、たまたま隣に座った地元の人から話しかけられ、「神奈川から来ています」というと、「がんばれよ」とお酒をご馳走してもらったこともありました。そんな何気ない出来事の中にも、人と人の距離の近さや人柄のあたたかさを感じてしまうそうです。
お酒に限らず、食べ物がおいしいのも魅力です。「都会に行けば、たいていのものは揃っているけれど、やっぱり値段が高い。地場産のものが安く食べられる、もしくはご近所から分けてもらえるなんて、すごく贅沢なこと」と、齋宮さんは語ります。
前例のないものでまちおこしを
現在は、庄内のイベント会場の運営に携わり、さまざまな人たちと関わりながらイベントの企画について勉強中。これからは、アニメやマンガ、ゲームなどサブカルチャーを中心としたイベントを企画していくことを目標にしています。庄内ではあまり見かけないサブカルチャーというジャンルですが、だからこそ逆に、それが売りになる、と考えており、各方面に丁寧に説明をしながら理解してもらうよう心がけています。