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山形県上山市出身。東京農業大学に入学を機に上京。卒業後、都内の酒販店に就職し、約6年半勤務。2013年に山梨のワイナリーである中央葡萄酒主催のイベントに参加したのをきっかけに“日本ワイン”に興味が沸く。お酒を作る側になりたいと思い、2014年7月に退職。8月に山形へUターンし、長井市の酒造メーカーに再就職。その後、縁があり「ウッディファーム&ワイナリー」に転職してワイン醸造家になる。一児の父親。
■ 山形での暮らし
【現在の仕事に就いた経緯を教えて下さい】
2015年より上山市にある「ウッディファーム&ワイナリー」でワイン醸造家をしています。元々、大学で醸造学科を専攻し、味噌、醤油、日本酒、焼酎などの発酵食品の勉強をしていました。
実学を通してお酒の魅力を知ったので、将来は作る側になりたいと思っていたのですが、OBに「まずは流通の現場を見たほうがいい」とアドバイスをいただき、酒販店に就職したんです。
改めて作り手になりたいと思ったターニングポイントは、東日本大震災でした。当時、コロナ禍と同じようにお酒がパタッと売れなくなる時期を経験。関東でも停電が続いていたり、どうしても飲もうという雰囲気ではなく「この業界どうしようか」という空気が流れていたんです。
そのときに岩手の酒造メーカーである「南部美人」の方が「自粛ムードをやめて、お酒を飲んで欲しい。それが被災地を応援することになります」と発信したことがあって。それがひとつのきっかけとなって、お酒業界が盛り返したんですね。
そのとき改めて「お酒には力がある」と感じました。人を突き動かすパワーやふさぎ込んだ誰かに勇気を与える力があるものだと実感した瞬間でした。
2013年に東京で開催された「山形ヴァンダジェ」という山形のワイナリーが集まるイベントに参加し、そこで「ウッディファーム&ワイナリー」が新しく立ち上がることを知りました。私の地元である上山市に新しいワイナリーができることにワクワクして、すぐ社長の木村義廣さんに会いに行きました。しかし、そのときはスタッフが足りているということで仕事には結びつかず…。その1年後に前任の醸造家が独立するからとご連絡をいただき、採用していただきました。
【Uターンしてきてよかったことは何ですか?】
妻と出会えたことだと思います。福島出身の妻とは友人の結婚式で出会いました。もし、Uターンしていなかったら、私はまだ独身だったはずです(笑)。昨年、子供も生まれてすごく幸せです。
地方での仕事は東京に比べると、給料水準がいいとは言えないかもしれません。でもそれ以上に「ウッディファームでワインを作っている」という大きな自覚があるので、圧倒的なやりがいを感じています。
私自身の名前を覚えてくださる人も増え、声をかけていただく機会も多くなりました。お金を払って買いたいと思っていただけるものを造れていることを実感できるのは、今の仕事ならではだと思います。
【気に入っている場所はありますか?】
温泉ですね。福島で暮らしていたとき、妻にとって温泉に入ることは小旅行に行くようなことだったそうなんですが、上山市ではすごく身近なので驚いていました。500円程度で泉質のいい温泉に入れるのは、魅力ですよね。
ワイナリーに訪れる方で「ワインを飲んで山形に来てみたくなった」というお話を伺うことがあります。山形のことを知らなくても、ワインを飲んで行きたいと思ってくれた、思わせることができたのは、すごくうれしいです。お酒は人を呼び込む力があると思っているので、もっともっとワインを通して「山形に来たい」と思っていただけるようにできたらいいと思っています。
移住者へメッセージ
【移住を考えている人に向けてアドバイスをお願いします】
山形で何がしたいのか、仕事は何をするのかをきちんと決めて、目標を持って戻ってくるのがいいと思います。
田舎が楽しそうとか、実家があるからとか、ふんわりした気持ちだともしかしたら、うまくいかないときに「失敗した」と思ってしまうと思うんですね。嫌なこと、うまくいかないことは、想定内にしておいたほうがいい。それでも揺るがない目標があれば、ちょっとやそっとのことは跳ね返せるのではないでしょうか。
まずは、自分が今山形でどうしたいのか。それをじっくり考えてみるといいかもしれません。
(R5.6月)
上山市にある「ウッディファーム&ワイナリー」で醸造家として働いている
ウッディーファームは自社畑で育てたブドウだけを使ったドメーヌワイン。金原さんもブドウの栽培に携わっている
収穫時期の夏から、醸造が始まる秋が一番忙しい季節
白ワインの「プティ・マンサン」(左)と、オレンジワインの「ハラグチバタケ・プティ・マンサン・オレンジ」
一緒に働くメンバーも移住者ばかり。ふたりとも独立を目指して修行中